もうだめなんて気のせいだって!(9)

 「こんなものかしらね」
 ぱん、と手をはたいて奏江が立ち上がる。
 「ちょっと殺風景じゃない?これつけてみようかな…」
 キョーコが持ち出して来たものを見て呆れた顔をする。
 「殺風景とか……
 「私、時々本っ気でアンタがわからないわ」
 「ええ~?ひどいモー子さん、私はモー子さんのことすっごく大好きで、全部わかりたいと思ってるのに」
 「…!」
 ばっ、とソファを振り返る頭につれて、しなやかに流れる黒髪。いきなり荒い動作をする友の姿に、キョーコは戸惑いと感嘆を同時に浮かべて見入る。
 「ああ、モー子さんてば何やっててもキレイ…でもどうしたの、急に」
 「一瞬、殺気が…いえ、何でもないわ。じゃあまあ、これはこれでいいとして」
 ガラの会幹部は口調に疲れを滲ませながら自分の席に戻り、その隣に作業を終えたキョーコが座る。
 「ちょうどお茶もよく出た頃よ」
 にっこり笑うキョーコよりも、奏江はその向こうを見た。
 「よく眠ってるわね?」
 二人の座るソファの向こう、直角に置かれたもう一つのソファには大きな黒いイキモノが横たわっている。皮肉げに言う親友に、調薬師がそっと微笑んだ。
 「ホキリソウの毒素は効果適温が高めだから、体温を下げるために眠り薬も飲ませてあるの。あまり強いものじゃないけど」
 「ふうん…タフな男よね」
 「え?うん、そうね。死ななくてよかった…」
 ほのかに微笑み、キョーコは蓮の髪を撫でた。
 「で!」
 奏江が友の手を取って体ごと自分に向かせる。
 「事情を説明するから、アンタはちゃんと聞いて、用心するって約束しなさい。一人で出歩いたり、家にいても油断しちゃダメよ」
 「う、うん…」
 迫力に圧され、キョーコは引き攣りながら肯った。
 「わかったわモー子さん、約束する。心配してくれてありがとう」
 「え。な、何言ってんのよバカね。私はただ責任上…それにアンタにもしもの事でもあれば、そこのソイツに祟られそうだし、寝覚めも悪いし…」
 「うんうん」
 蓮を指してあばれる友にニコニコ頷く仔犬のような信頼の瞳に、奏江は語尾を弱めたまま奥歯を噛んだ。白い繊手をさっと振る。
 「とにかく!話を進めるわよ。
 「ええとね、まず…まだ本決まりじゃないから言ってなかったんだけど」
 眉間に手を当てると、奏江は頭痛を堪えるような顔になった。
 「ガラの会の次期会長に選ばれたのよ、私。一人で好きにやる方が向いてるから、断ろうとしたんだけど頼むからって言われて」
 「ああ!だってモー子さん綺麗なんだもの。皆憧れて頑張ろうって思うわよ。今の会長さんも美人だものね~」
 キョーコがうっとり両手を握り合わせる。
 「もー、話が進まないじゃない。いちいち茶々入れるのやめてくれない!?」
 「モー子さん赤くなってる、可愛い~」
 「ぶつわよ」
 厳と睨まれ、キョーコは自分の口を塞いだ。その奥でモゴモゴ呟く。
 「ホントノコトナノニ…」
 「ところがね!馬鹿な女がいて、どっかの大金持ちのお嬢様なんだけど、自分も会長職狙ってたのに逃しそうになったものだから妙なこと言い出したのよ!!」
 「妙なこと?」
 力強く言い切った滑舌と肺活量に内心で感心しながら、調薬師が首を傾げた。
 「琴南奏江は“痩身の魔女”と仲が良い、琴南の会長就任自体に異論はないが、京子の存在によって会内のパワーバランスが崩れる恐れがある。ガラの会の安寧のために、ダイエット会に影響の大きくなりすぎた京子を排除すべきである。とかってね。舐めてんじゃないわってのよ。自分がそうしようと思うなら、一人でだってのし上がって見せ…
 「…アンタ、何キラキラしてんのよ!?」
 「だって!人の目にも私とモー子さんは仲が良いって見えるんだって思ったら嬉しくて!!」
 「ああもうっ」
 すこすこ投げつけられるダイスキ光線を腕でブロックし、奏江は怒りの声を上げた。
 「アンタはっ!だから、少しは危機感を持ちなさいって言ってるでしょうがさっきからずっと!!理由がいくら馬鹿馬鹿しくたって、現実に命狙われてるのよ!?
 「しかも、証拠を揃えて勧告するか、最悪役人に通報しようと思って探ってたら」
 と奏江は、揺り椅子に縛り付けられた上に両手両足にいくつもリボンつきの鈴を吊り下げられた女襲撃者を指し、激昂も露わに叫びつける。
 「あの人のことつかんだとたんに逃げ込まれたのよ、笑っちゃうくらい大金持ちのお父様の家にね!!」
 「で、でもそんな」
 「ちなみにそのお父様、ガラの会の最大出資者でもあるわ」
 「えーっと…」
 「で、ともかくアンタが心配で様子を見に…いえその、だからね、危機はまだ去ってないの。下手したら、向こうは意地になっちゃってるかもしれない。アンタがぷよの会に誘われたことまで知ってたわよ」
 「あ、うん。でもお誘いは断ったのよ?だってあそこは、モー子さんの所と仲が悪いし」
 一生懸命言う様子に、奏江はとうとう脱力した。
 「もうホント、あんたって」
 「そんな風だから、だろう?」
 いきなり奏江でもキョーコでもない女の声が割り込んだ。ちりん、という鈴の音と。





  
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 理屈はあまり考えないでつかーさい…
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