恒例ちらりずむ~。
やっと一冊、入稿できました~。遅れに遅れまくっとるな…はう~。
タイトルは「ガルヴ・オーク」(ゲール語で「ならず者」)
ちらりは実は冒頭ではありません。冒頭がちょっと、あまりにアレかなってカンジでして。いやはや。
と、とにかく、冬コミ新刊無しは免れたですよ!!
携帯コンロにかけた手鍋の中で、ぽこぽことやけに平和な音が立ち始めている。
「はい。これ、君のだろう?」
トートバッグを差し出した金髪の中尉は、金具にぽつりと飛んだ血に気付いてこっそり指で拭い取った。
少女がおずおず自分の手荷物を受け取り、縋るように胸に抱え込む。
「あ…ありがとうございます」
まだ青い顔をして、それでも感謝を伝えることは忘れないから、クオンはほんの少し唇を緩めた。何か、懐かしい思いがかすめた気がした。
「いい子だね」
頭を撫でてみると、少女が眉を下げる。
「子供じゃありません…」
「そうか、失礼」
素直に謝り、中尉は引っ込めた自分の手を見下ろした。しなやかな髪の感触のせいだろうか?一瞬、抱きしめたい、などという衝動を覚えたのは。
クオンは自分にも理解できない感情を潰すように拳を握り、テーブルに視線を移した。
コンロの火を落として手鍋を取り、ステンレスマグにセットしたドリップパックにゆっくりと湯を注ぐ。
「それで君、キョーコちゃん」
「はい」
とー…と流れ落ちる湯を注意ぶかく見守りながら、彼は肝心な方向へと話題を戻した。
「君はどうして、あんな所に1人でいたのかな。連れとか、親御さんとかは?」
二つコーヒーを淹れ、片方をキョーコに渡す。やはり礼を言う少女の手近に、粉末ミルクと砂糖のスティックを押し遣った。
すこし困ったような顔に非難はなかったが、青い瞳には訝る色がある。
現在、この国は騒動の渦中にある。若い、それも外国人の娘が1人で出歩いていていい場所ではないのだ。
「…私」
涙を湛えた大きな瞳が、じっと彼を見上げる。
「う」
小さな声を洩らし口元を押さえる男の様子には気付かず、キョーコは小さな唇から震える声を吐き零した。
「りょ、両親と、昨夜まで一緒で…っ。でも、1人で逃げなきゃならなくなって、ど、どっちへ行っていいかもわからなくてっ」
「…ああ…」
クオンが溜め息を吐く。自分のコーヒーをひと口含み、思案の瞳を伏せた。
タイトルは「ガルヴ・オーク」(ゲール語で「ならず者」)
ちらりは実は冒頭ではありません。冒頭がちょっと、あまりにアレかなってカンジでして。いやはや。
と、とにかく、冬コミ新刊無しは免れたですよ!!
携帯コンロにかけた手鍋の中で、ぽこぽことやけに平和な音が立ち始めている。
「はい。これ、君のだろう?」
トートバッグを差し出した金髪の中尉は、金具にぽつりと飛んだ血に気付いてこっそり指で拭い取った。
少女がおずおず自分の手荷物を受け取り、縋るように胸に抱え込む。
「あ…ありがとうございます」
まだ青い顔をして、それでも感謝を伝えることは忘れないから、クオンはほんの少し唇を緩めた。何か、懐かしい思いがかすめた気がした。
「いい子だね」
頭を撫でてみると、少女が眉を下げる。
「子供じゃありません…」
「そうか、失礼」
素直に謝り、中尉は引っ込めた自分の手を見下ろした。しなやかな髪の感触のせいだろうか?一瞬、抱きしめたい、などという衝動を覚えたのは。
クオンは自分にも理解できない感情を潰すように拳を握り、テーブルに視線を移した。
コンロの火を落として手鍋を取り、ステンレスマグにセットしたドリップパックにゆっくりと湯を注ぐ。
「それで君、キョーコちゃん」
「はい」
とー…と流れ落ちる湯を注意ぶかく見守りながら、彼は肝心な方向へと話題を戻した。
「君はどうして、あんな所に1人でいたのかな。連れとか、親御さんとかは?」
二つコーヒーを淹れ、片方をキョーコに渡す。やはり礼を言う少女の手近に、粉末ミルクと砂糖のスティックを押し遣った。
すこし困ったような顔に非難はなかったが、青い瞳には訝る色がある。
現在、この国は騒動の渦中にある。若い、それも外国人の娘が1人で出歩いていていい場所ではないのだ。
「…私」
涙を湛えた大きな瞳が、じっと彼を見上げる。
「う」
小さな声を洩らし口元を押さえる男の様子には気付かず、キョーコは小さな唇から震える声を吐き零した。
「りょ、両親と、昨夜まで一緒で…っ。でも、1人で逃げなきゃならなくなって、ど、どっちへ行っていいかもわからなくてっ」
「…ああ…」
クオンが溜め息を吐く。自分のコーヒーをひと口含み、思案の瞳を伏せた。
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