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たいせつでたいせつで(80)

 「それで、キョーコ」
 くる。
 ジュリエナが綺麗にターンを決めて少女に向き直った。
 「は、はいっ!?」
 きらりと光る青い青い瞳を見たキョーコはぴしりと直立不動の姿勢になった。
 奇跡のような美貌の母は並んで立つ息子と少女をじっくり眺め、満足そうに微笑み、
 かと思うと足早に歩み寄った。
 すいと両手を小柄な少女に伸ばす。
 「かわいいわ、可愛い!!もう貴方ったら、何着ても可愛いんだからっ」
 ぎゅうぎゅう抱きしめられてキョーコは目を白黒させた。
 「え、と、あの、ジュリママ。お、お帰りなさい。出張?お疲れ様でした」
 なんとか言っておずおず抱きしめ返すのがすこぶるツボに入ったらしい。
 「ああ癒されるわ~。大好きよキョーコ!!」
 叫ぶや、トップモデルは腕に更に力をこめる。細くしなやかな腕は意外なほど力が強く、少女はだんだんあぷあぷもがき出した。
 「母さん、キョーコちゃんが苦しがってる」
 べり、とクオンが二人を分けた。真っ赤な顔で息をつくキョーコは、今度は少年の腕に引き取られる。
 「あらクオン、ずるいわ。貴方はいつも一緒にいられるんだから、たまには私にキョーコを譲ってちょうだい」
 クオンは奪回を試みる母の手をさっと避けた。
 「俺だって、もうじき卒業したらそうそう一緒にいられなくなるんだ」
 「あ、えと」
 キョーコが何か言いかけた。
 「ん?」
 少年がなにか期待するような視線を向ける。
 「どうかした?キョーコちゃん。勿論、君が会いたいって言ってくれれば、すぐ飛んで行くよ」
 「え、あ、う、ん…?な、何でもない、の」
 「?」
 今度は少し不満そうに、少年は少女の瞳を覗きこもうとした。しかしキョーコは彼の腕をするりと脱け出てカメラの設置されている方向を見る。
 「あの、監督。何かすること…あれ?」
 マカナンはそこにはいなかった。スタジオの中を見回すと、いつの間に移動したのか隅の壁際で床に座り込んでぶつぶつ呟いている。
 「あ~…れが、そう、だろ?ってえと、こっちから…いや違うな…」
 「監」
 「待って」
 左手でバリバリ頭をかき回し、右手は万年筆を振り回すマカナンに声をかけようとして、キョーコはクオンとジュリエナの2人に止められた。
 「しばらくそっとしておきましょう。じゃないとご機嫌損ねちゃうわよ?」
 「うん。何か降りて来たみたいだから、邪魔すると怒られるよ」
 ともに微笑む美麗親子の言葉に従うまでもなく、キョーコは魂がふわりと抜け上がろうとする心地を覚えた。
 「ちょっと、しっかりしなさいよ」
 よた、とよろめく彼女の腕をつかんだのは奏江だった。
 「あ、モー子さん」
 「監督、コンテ直すからちょっと待てですって」
 「ああ、やっぱり」
 クオンが苦笑する。
 それには目を向けず、長い髪の少女はシャキシャキと友に尋ねた。
 「で、アンタは何をぽーっとしてんの。機材とか色々あるんだから、フラフラしてちゃ駄目よ」
 「だ、だって~」
 キョーコがやうやう抗う。
 「クオンとジュリママが揃うところ、久しぶりに見て…破壊力が大きすぎるんだもの。反則よ、規定外よ、綺麗すぎるって凶器だわっ」
 ぼちょぼちょ紡がれる賛辞?に、母と息子は顔を見合わせた。
 「キョーコだって凄く可愛いわよ?キモノもよく似合って、いつもより少し大人っぽいし」
 ジュリエナがとりなすも、少女はぶんぶん首を振る。
 「私なんか千代紙巻いたワラ人形がいいところです~っ」
 「ってキョーコちゃん…」
 「アンタねえ」
 クオンと奏江が同時に声を発した。互いの顔を見遣って譲り合った一瞬、かしゅ、と音がしてフラッシュが光った。
 「ショーン」
 ジュリエナの咎める声も意に介さず、デジカメを構えたままのロッティはそのいかにも謹厳な顔をキョーコに向ける。
 「しかし主役は君だ、キョーコ」
 「え」
 「君がまず監督を、クオンを、クーを、カナエを、ジュリを集めた」
 目を瞠る日本少女に、彼はカメラを下げてうんうんと頷いて見せる。腕組みしようとしたら、膨らんだポケットに邪魔されて手が届かない。
 「ああ、何と言うか…一目でズバーン、という派手さは、それはジュリエナやクーのようには行かないかもしれない。しかし君には不思議な魅力があって、それはじわじわと効いてどんどん浸透するんだよ。それこそ一瞬ごとにね」
 ああ、と呟いたのはクオンだった。心当たりありげに。ジュリエナも。
 「そうね、キョーコを見てると見た秒数だけ好きになるもの」
 「え?え?」
 うろたえたキョーコは親友を見るが、相手はあさってを見ながらも納得の表情を浮かべている。
 「私だって、ちょっとした見る目はあるんだよ、キョーコ。クー・ヒズリのマネージャーの言葉を信じなさい。
 「君は、もっと自信を持つべきだ」
 「え、えと、あの、は、い」
 なるほど敏腕マネージャー氏はどう言えば彼女が反論できないか心得ているから、確かに人を見る目はあるのだろう。半信半疑の様子を残しながらも、キョーコは頬を紅潮させた。
 そこへ。
 とんとん。
 と紙を揃える音がして、映画監督の声が飛んで来る。
 「だーから最初っから言ってんだろうが、嬢ちゃんは面白えってよう」
 彼はぼりぼり頭をかき回し、瞳の光を隠した。
 「通り一遍に生きて来た奴にゃない、なんかがある」




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 もう80話ですよ~。こりゃ100話越え決定だ(笑)。
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