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たいせつでたいせつで(85)

 「別に、ケガなんてしてないけど…」
 キョーコはとことこ自分の部屋に入り、テーブルにどさりと菓子の袋を置く。
 「でも、足に血が」
 クオンに指摘され、不思議そうに視線を下げた。
 「え!?」
 「あ」
 少女とその養母が同時に声を上げた。おかみは急いで少女の手を引く。
 「キョーコちゃん、ちょっとこっちおいで。手当てしなきゃ」
 「おかあさん、これ…」
 情けない顔をするキョーコの足には、一筋の血が伝っていた。
 「大丈夫だから。クオン君ごめんね、ちょっと失礼するよ」
 「え、あ、はい。キョーコちゃんは…」
 「平気だよ、ケガでも病気でもないから」
 とおかみは笑顔さえ浮かべて言う。クオンはどういうことだろうと訝ったが、耳まで真っ赤にして追い立てられて行く少女に尋ねられる状況でもない。
 ぽつねんとキョーコの部屋に残され、所在無くクッションを弄ぶ。
 自分は帰った方がいいだろうか、と思った。折角のキョーコとの休日だし、話というのも気になるが、当の少女が不調であるなら負担はかけたくない。このまま暇を告げようか?
 思案しながら、彼は去り際に自分を見上げた大きな瞳を思い出した。
 うっすら涙を浮かべた、不安げな。なにか、恥らうような。
 クオンは眉を寄せる。
 帰るにしても、その前にキョーコの状態をちゃんと知っておきたい。おかみは大丈夫だと言っていたが、彼女が心細いなら慰めてあげたい。
 それにしても、ケガじゃないならどうしてあんなに血が…
 つらつら考え、彼は突然フリーズした。まさか。
 キョーコは、女の子だ。ありがたいことに。
 それがケガでも病気でもなく血を流すと言ったら…
 「え、えと」
 もしかすると。いやしなくても。
 しょ
 単語を全部思い浮かべる前に、彼は高速でかぶりを振った。想像が妄いや連想を呼んで収拾がつかなくなりそうだ。
 クオンは無意味にわたわた動く自分の手足を信じられない思いで見下ろす。
 自分はうろたえている。突然キョーコに発生した生々しさに。どうして。
 とうに、キョーコが欲しい、手に入れると誓ったはずだ。そのために待つことも。なのになぜ今、そのときが近付いたしるしにこんなに狼狽しているのだろう。
 「こんなこと、今までなかったのに」
 とうに女の肌も知っている。ひとときの快楽としてなら。けれど…
 「ちがうんだ」
 片手を額に押し当て、少年は一人ごちる。改めて、キョーコとは自分にとってどういう存在なのだろうと思った。
 可愛い。
 愛しい。
 大切で、優しく優しく守りたい。
 夢のように甘い安らぎと、時折ちりと胸を刺すいたみをくれる少女。
 いたみの正体は?
 「…!」
 口元を押さえ、彼は揺れる呼吸を掌に隠した。誰も見ていないにも関わらず、そうせずにはいられなかった。
 呼吸の名を、罪悪感と言うのではないか…
 それは、彼の少年期の終わりだったかもしれない。
 初めての憧れが、やさしくにぶい恋が、焦げつくような欲望を加えて変容して行く。最後には、何が彼の手に残るのだろう?
 あの子だといい。
 いいや、あの子以外であるものか。
 クオンは細かく震えている自分の手を見つめて思う。その望みを取り込むようにぎゅっと拳を作った時、唐突にマカナンの声が耳に蘇った。
 『あの子から色々教わることもあるだろ』
 あの時も彼は同意したが、それがこんなに圧倒的で…ある種醜くさえ見えるものまで含んでいるとは思わなかった。彼は、わかっていなかったのだ。
 世の中の裏を見て、一人絶望に堕ちて行く日々。
 そこで自分も黒く染まっているつもりで、背徳に流れ、しかしどこかで、自分は白いままだと信じていたのかもしれない。本当に黒いのは、自分ではないと。だから周囲に深く関わろうとせずに。
 キョーコはとうとう、そんな彼を暴いた。
 お守りだと思っていた少女は、世界であり、世界を開くための供犠だった。
 「俺の、ための」
 クオンは低く呟く。手に入れる、という誓いは、あきらかに彼の中で変容した。より深い、強い、暗い思いを抱えて彼はキョーコを求めるだろう。
 ああ、だけど神様…
 と彼は、たいせつな少女のために祈る。
 俺があの子を傷つけませんように。あの子が俺を選んでくれるまで、ちゃんと待てますように。
 階段の方から、二人分の足音が聞こえ始める。それを彼は、ほとんど怯える気持ちで待った。





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 やっと初ブラからの伏線が始末できた…えれえ話数が空いたな;
 クオ坊が黒くならんよーにするのが大変でした。でもちょっと黒いかな…
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