スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

たいせつでたいせつで(87)

 「えっ…と」
 昼休み、いつもの場所でキョーコはそろりと周囲を見渡した。
 「何キョロキョロしてるのよ」
 半ば強引に引っ張って来られた奏江が不満顔で言う。
 「あ、べ、別に。あのそう言えばモー子さん、今日…えと、授業が終わったらまっすぐ帰っちゃう?」
 「ええ、月曜は養成所があるもの」
 「そ、そう…」
 長い髪の少女はぽんと言い捨てたが、肩を落とすキョーコの様子を見て軽く柳眉を寄せた。
 「なに、今日何かあるの?」
 「え?あ、ううん。別に…何でもない」
 と言いつつキョーコはそわそわちらちらと周囲を伺う。奏江が同じ方向へ目を向けて瞳を斜めに落とした。
 「…ヒズリ先輩、遅いわね?」
 「えっ!?」
 ぼそりと言ってみるとキョーコが飛び上がる。
 「いつもだったらもう駆けつけて来てる頃じゃない。あの人、異常に移動が速いわよね」
 「駆けつけてってそんな、クオンは脚が長いし速いから」
 「ふーん…」
 奏江の口調が変わった。
 「彼と、何かあったの?」
 「な!?ななな、何言ってるのモー子さんったら、何もないわよ何も。あるわけないじゃない。クオンは優しいし、気を遣ってくれるし」
 しどろもどろになる友人を見据え、ハンサムガールはもう一度ふうんと呟く。
 「まあそれは、いつものことだけど。じゃあなんでアンタの態度がおかしいの?」
 「お、おかしくなんかないわ。私は普通だもの」
 しかしもじもじとカバンのベルトをいじりながらでは説得力がない。
 その姿に奏江はわずかに目を眇める。キョーコはそのカバンを、トイレに行くにも持ち歩いていた。珍しいと言うと恥ずかしそうに初潮を迎えたのだと言って…
 「そう言えばこの前」
 「え」
 「昨日の日曜に会うみたいなこと言ってたわね。カメラテストのあった日」
 「え」
 「しかも、昨日始まった、のよね?アンタ」
 「う」
 「…知られたとかで、恥ずかしいの?」
 「うっ…うん…きのう、クオンがはじめに血に気がついて。それで、ど、どういうことかわかっちゃったみたいで、急に帰っちゃって」
 「あー」
 それは、初潮を迎えるタイミングとしてはかなり痛い。奏江はそっとこめかみを押さえた。
 「まあ、でも…仕方ない、でしょ?当然で自然なことなんだから。ブラと同じで、成長してる証拠よ」
 う、とキョーコが呻く。
 「そうなんだけど。そうなんだけどっ」
 涙目の友に、奏江もさすがに嘆息した。
 「まあねえ…恥ずかしいって気持ちもわかるけど」
 「あ」
 言いかけた時、キョーコが小さな声を上げた。同時に、さっと項垂れていた姿勢を起こす。棒を飲んだかというほど、不自然にまっすぐに。
 奏江は同じ方向を振り返って、予想通りの人物の姿を見た。金の髪の少年はいつもに比べると格段にゆったりした足取りで、一歩一歩を確かめるように近付いて来る。
 (あっちもかなり意識してるみたい…平静を装ってるけど、装いすぎよね)
 素を知っていれば俳優の演技も容易に見抜けるらしい。一瞬よたついたのも見逃さず、奏江は少年と少女を見比べた。心の底から、今すぐこの場から立ち去りたいと思う。しかしそんなことをすれば、あとでキョーコがうるさいに決まっている。
 考えていたら、隣からぼそりと小さな呟きが聞こえた。
 「やっぱり、やめようかな…」
 「なに…」
 聞き返そうとした言葉がすずしい声に遮られる。
 「ごめん、ね。待たせちゃって」
 「え、う、ううん。あの、私たちも今来たところだから」
 どう見ても芝の上にビニールシートを拡げ弁当もスタンバっているのだが、キョーコはそんなことを言う。クオンは曖昧な微笑を浮かべ、シートの上に腰を下ろした。
 「教室を出る時に、クラスの奴につかまって」
 と、ジーンズの尻ポケットから白い封筒を抜き出す。
 「なあに?」
 尋ねるキョーコに、すかすか振って見せた。
 「パーティーの招待状。卒業記念だってさ。自宅のガレージで集まって騒ぐとか…
 「…ん」
 言いかけて、彼はふと何かに思い当たったように少女の顔を見る。
 「クオン?」
 「あ…えっと、キョーコちゃん、これ一緒に行ってくれないかな」
 「え!?」
 「いや、パートナー同伴が基本とか言われて」
 「でもクオンなら、他にいっぱい立候補する人が…」
 ちょぼちょぼ言いながら、キョーコの手は手際よく昼食の支度をととのえている。プラスチックの皿に盛ったおかずを差し出すと、クオンに手をつかまれた。
 「俺は、キョーコちゃんがいいんだ」
 「えっ…」
 一瞬キョーコが真っ白になった時、んん、げほんと咳払いが上がった。
 「キョーコ、悪いけど私、馬鹿馬鹿しくなっ…いえ用を思い出したから失礼するわ」
 言って奏江が、自分の弁当箱を手に立ち上がる。キョーコはさっと涙目を振り向けるが、彼女は敢えて無視してさっさと歩き出した。
 「モー子さん~?」
 「あとで教室でね」
 ひらひら手を振って立ち去る少女を、点目のまま二人は見送る。どちらもうっすら頬が赤い。
 「あ、の、クオン」
 「え!?あ、何?」
 「手、離して…」
 「あ」
 小さな声に、クオンは慌てて従おうとして、しかし逆に軽く引いた。
 「キョーコ、ちゃん」
 「な、何?」
 真剣な声音に少女は困惑を浮かべる。それへ彼は、息をひとつ吸ってから尋ねた。
 「俺のパートナーになるのは、嫌?」
 「えっ!」
 キョーコは身を引こうとするが、クオンは彼女の手をがっちりつかんだままの自分の手を見つめて動かない。
 「俺に触れられるのは…嫌?」
 今度は、やけに声が弱かった。キョーコが慌ててかぶりを振る。
 「いっ、嫌なわけない!!クオンのこと、大好きだもの。ただちょっと…え」
 やっとまっすぐ見上げれば、クオンの整った造作は妙に白っぽくなって…
 次の瞬間、真っ赤に染まった。
 「ご、ごめん!」
 ぶん投げるようにキョーコの手を離し、ぱっと後ろを向く。
 「だけど……嬉しい」
 ぽつりと言う少年の言葉に、今度は少女がぼんと沸騰した。
 「あ、あのだって、私、えと、その…
 「お、お昼食べましょ、ね、休み時間なくなっちゃう。えっと、ごはんのタッパー…おかあさんが詰めてくれたはず」
 狼狽という文字を擬人化したらこうもあろうかという様子で彼女はばばばと荷物を探る。
 「あ、あった。これ…」
 つかみ出したシール容器の蓋を半分開けて…
 そのまま固まった。
 中にもこもこと詰められた赤い色を視認して。
 「キョーコちゃん?」
 無言になってしまったキョーコを訝って振り返ったクオンは、そこに赤い飯の詰まったタッパーを手に、それよりもっと真っ赤になってふるふる震えている少女を発見したのだった。
 「おっ…おかあさんっ……」

  



web拍手 by FC2



 おかみのリベンジ成る(笑)。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
作品一覧
サイト「花うてHP!」トップよりブログ内の作品のリストに飛べます。閲覧者の皆様のアクションに対して加算させて戴く「花うてポイント」の説明・管理もこちらよりどうぞ!

作品リスト(サイトトップ)

アクセス

・メールフォーム

・BBS

リンク

◆リンクページ


◆当ブログへのリンクについて

当ブログはスキビコンテンツをお持ちのサイト様に限りリンクフリーといたします。


ブログ名:花のうてな

管理人名:みなみ なみ

URL:http://hananoutena.blog14.

fc2.com/


 ↓各ジャンルごたまぜの本サイト。

↓スキビの同人誌作品をブログ記事として収載・販売しています。(2014年7月までで更新停止)

 ↓BUD BOY二次です。


  • 管理画面
  • RSSリンクの表示
    QRコード
    QR
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。