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ねがうほど(前編)

 「君はセツ?それとも…」
 尋ねる自分こそ、誰であるのか。
 室内に溜まる夜気を震わせる、かすれた囁き声に、
 ひたりと合わさる視線に、
 彼女は。

 ただ、 


 ゆっくりと微笑んだ。

 
 

 澄んだ瞳に浮く熱を認め、蓮は軽いめまいを覚えた。望み続けた唇に、吸い寄せられるように唇を寄せる。
 夢ではないだろうか。
 と疑うのか、彼は一瞬動作を止めた。訝るように寄せた眉の間に刻まれた皺へ細い指が伸びる。
 「アタシを見る時に、そんな顔しないで」
 そんなことを言って男の眉間に触れる少女は、ではセツカなのか。しかしそれなら、その声の細さは何だ。
 蓮は思わず白い手を自分の掌に握りこみ、羽化したての蝶に似たかすかな震えを感じ取った。先程とおなじ質問を発しようかと口を開く。
 しかし少女がかぶりを振る方が早かった。
 そうっと、目を閉じる方が早かった。
 「…!」
 桎梏は放たれた。過去であってもいい、現在であってもいい、未来であるならなおさら。

 君を、願う。

 


 「それ、や…」
 羞恥にあかく染まる囁きを聞き捨て、蓮は舌先でキョーコの耳を犯し続ける。なぶるような執拗な動きに、少女は次第に荒くなる自分の呼吸を信じがたく身をよじった。
 「どうして」
 尋ねる男の低い声は、揶揄と切迫の双方を浮かべて短く切れる。
 「気持ちいいくせに」
 「…っ…」
 囁きに白い手が耳を塞ごうと持ち上がった。蓮はさっとそれをつかまえ、枕に押しつけながら少し身を起こした。
 鼻の先を合わせ、ぷくぷくと赤い唇の上に吐息を落とす。
 「嘘ばかり言う悪い口には、お仕置きが必要だな」
 そうとも、彼を弄う者は罰せられなければならない。
 けれど、どこからが嘘なのだろう。
 過去に囚われうなされる彼に許すと言い、
 許されないと拒めばそんなはずはないと繰り返し、
 自分はすべてを受け入れると誓った、あのことばたちの。
 どこからどこまでが、彼女自身のことばなのだろう。
 もし、すべてを彼女のかぶる別人格が語ったのだとしたら、今にも彼女は自分を突き飛ばして逃げ出すのではないか。
 そんなことが、許せるだろうか?
 今しも手に入れようとしているこの甘い果実を、みすみす見逃すような真似が、いったい自分にできると言うのか。
 「無理だ…」
 ほつと零された呟きに、少女が涙の浮いた瞳を上げる。
 尋ねかける視線の揺らぎに堪えかね、彼はきつく目を閉じた。
 確かめる方法はある。呼んでみればいい。セツ、と。
 妹であるならにんまり笑うだろう。なあに、兄さん。
 しかし違っていれば…
 妹でないなら、後輩であるなら、彼の愛しい少女であるなら。
 哀しませて、しまうのではないか。
 これは期待だ、と彼は痛む胸を押さえた。
 哀しんで欲しい。いま手に入れようとしているのが、君であって欲しい。
 そうならば俺は。
 蓮はふと息を入れ、自分に組み敷かれている、切ないくらい細い肢体を見下ろした。
 ひっそりとその唇が開く。

   

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 しんねんいっぱつめからこれかー。

 いやちょっと、ひた君の続きがどうにも元日の更新に不向きでしてね?


 
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