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パクス・ツルガーナ(7)~(12)

 拍手お礼にて連載しているパラレル話です。
 敏腕なのに担当タレントにモテ過ぎたり自信を失わせたりするのが問題というマネージャー敦賀蓮の手腕によって、ちょっと変わった性格で扱いづらいとされるタレント京子がのし上がっていく(?)物語。最後は…?



パクス・ツルガーナ

(7)
 「そ、そうか…」
 タレント部主任は微妙に顔を引きつらせながら蓮の言葉を肯った。
 「まあ、うまくやれそうだと言うなら何よりだ。我々も肩の荷が下り…いやその何だ、安心できる。うん」
 発言内容の割に目を泳がせ、椹は無意味に自分の机の上のものを動かす。
 それへやや冷淡に頷く蓮に、今度は京子が口を開いた。
 「あの、勝手なことを言わないで戴きたいのですが」
 「うん?」
 蓮は少女に目を戻し、かるく目を瞠る。
 「君、いまどきの子にしては言葉遣いが綺麗だね」
 「は、い?」
 「よく見れば姿勢もいいし、動作にも粗雑なところがない」
 「え、えっと」
 一転にこやかに両手を拡げる蓮が一歩前に出れば、京子はじりと一歩下がる。
 「…」
 すこし目を細め、マネージャーは考える目をした。そう言えば、資料を全部読んでいない、が。



(8)
 この子は何が原因で、問題続出たる自分と組まされワレトジのと言われる破目になっているのだろう?
 もっとも、そして今更な疑問を抱え、蓮は細身の少女を見下ろす。
 「な、何ですか」
 すると先ほどの恨みがましい表情の剥がれた京子は困惑を浮かべて彼を見返した。じっと見上げてくる頼りなげな瞳に、蓮は意外なほど心を動かされるのを感じた。
 これは武器になる、と彼は小さな胸の痛みとともに確信する。
 待て、胸の痛み?なぜそんなものを覚える?
 「あの…」
 「蓮?」
 椹までに不審げに呼びかけられ、彼ははっと我に返った。目下の急はそんなことよりも、彼の管理下に置かれるはずのタレントとの友好にあるはずだ。
 「ああ、ごめん。いける、って改めて思って」
 蓮は少女に、できるだけ優しく頼もしげな印象を与えるようにと微笑んでみる。
 京子は不得要領な顔をしたままだが、少しだけ眉間に入った力が抜けたようにも見えた。


(9)
 「さっき俺が言ったことを、聞いてたよね?」
 「さっき、と仰いますと…最初の、地味、という?」
 「根に持つね…まあ学習能力が高いと言い換えておこうかな」
 マネージャーはちょっと無茶な言い換えをして苦笑を浮かべる。
 「そうじゃなくて、君と俺が最高のコンビになるって話のほう」
 「え、う、な…そ、そんなことどうして言い切れるんですかっ。いま初めて顔を合わせて、しかもいきなり自分についての不評を突きつけられた私が、俄かに信じる気になるとお思いなんですか!?」
 「いやだから、それは悪かったけど!そのあと、別のことも言っただろう?」
 言い切ると、京子が明らかに怯んだ。色の白い顔に朱が入り、絶句するさまは妙に嗜虐心を…
 いや俺何考えてるんだ、と蓮は慌ててかぶりを振った。
 「とにかく。第一印象なんかにこだわってる余裕は、俺たちのどっちにもない。これは、君だって認めざるを得ないだろう?」
 「そ、それは…」
 少女がぐっと息を呑む。蓮はここぞとばかり畳み掛けた。
 「君を、きっと育てて見せる。俺も君の存在によって、自分の生きる場所を見つけるだろう。だから…
 「一緒に戦おう、京子」


(10)
 「…たたかう…」
 ぼんやり呟いた少女は、体の脇に握っていた拳をゆるゆると見下ろした。
 そこに次第に力がともるのを、蓮はうずうずするように見守る。
 やがて、目覚めるように彼女は大きな瞳を見開く。
 「私と、貴方で」
 「そう」
 意思のこもる声に、彼はしっかりと頷いた。
 「どこまで、行けますか」
 まっすぐな視線に、彼はまっすぐに応えた。
 「どこまでも」
 「…!」
 二人の唇にのぼる、ゆるやかな軌跡。
 蓮が、すいと右手を差し出した。
 「おいで」


(11)
 大きな手をじっと見つめ、キョーコはそろりと自分の右手を持ち上げた。
 どこまでも行けると行ったマネージャーの言葉を信じていいのかどうかはわからない。けれど始めなければ何も始まらないのだ。
 友好のしるしと言うよりはともに戦う約束としての握手に手を預け、彼女は自分のうちに高揚を見る。
 肚は定まった。
 「よろしく、お願いします…っ」
 キョーコはしっかりした声で言う。
 「こちらこそ」
 蓮の顔を見上げれば、意外なほど優しい微笑が返って来る。
 なんと眩しいほどの笑顔、聞き及ぶ彼の不遇はそれこそが作り出していたのではないか。さもむべなるかな、とかすかな同情を覚える少女に、握手の手を離した新任マネージャーはぴこりと人差し指を立てて見せた。
 「よし、じゃあ、まず」


(12)
 「これからのために、いくつか行く場所がある。今日の予定は…と」
 蓮は京子の資料を繰り、スケジュールリストを見つけ出した。見事に真っ白だ。
 「よし、じゃ行こう」
 先行きを考えればよしどころではないはずだが、彼は簡単に頷いて担当タレントをドアへと促した。
 「では失礼します、椹主任。京子はお預かりします、任せて下さい」
 「あ、ああ…」
 少女の背を抱えるようにして陣風のごとく歩き出すマネージャーを、タレント部主任は呆けた声を洩らしたまま見送る。
 成り行きが意外だったというのもあるが。どういうわけか新米タレントと着任直後のマネージャーの動作が妙にシンクロしているのだ。
 まっすぐな背筋、まっすぐな歩き方、まっすぐな視線。
 「ふーむ…」
 椹は小さく呟いて我が顎を撫でた。
 「案外、本当に最高のコンビに化けたりしてな?」



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