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パクス・ツルガーナ(13)~(18)

 拍手お礼にて連載しているパラレル話です。
 敏腕なのに担当タレントにモテ過ぎたり自信を失わせたりするのが問題というマネージャー敦賀蓮の手腕によって、ちょっと変わった性格で扱いづらいとされるタレント京子がのし上がっていく(?)物語。最後は…?


パクス・ツルガーナ

(13)
 タレント部主任が明るい(?)未来に思いを馳せている頃。
 LME本社ビルを貫通するエレベータの中には、巨大なリスが出現していた。
 大きな尻尾を思い切りぶわと膨らませ、小さな丸い耳を垂らしてカタカタコトコト隅で震える小動物。
 蓮は戸惑いと呆れと納得が複雑にミックスされた声をそれへ向ける。
 「何も、そんなに驚かなくても…」
 「だだだ、だって」
 真っ赤になった頬を押さえ、京子はいっそう身を縮めた。
 「エレベータの扉開けて待ってたくらいでお礼にち、ちゅ、とか」
 「それだけじゃないよ。これからよろしくの意味もこめて、まあ、親しめの挨拶って所かな」
 「たっ正しい日本人はそんなことしません~っっっ!!!」
 「…!!」
 それが問題を起こす要因なんですよ!!と力いっぱい叫ぶ担当タレントに、蓮は初めて思い当たったと言うように息を飲んだ。


(14)
 「そういう、ものかな…?」
 そろりと尋ねる蓮に、京子が大きく頷く。
 「そうなんですっ。普通はそんな真似しないんですっ」
 点目のマネージャーに、強硬に主張する。
 「そんな感覚もわからないなんて、貴方は外人さんですかっ」
 小さな拳を振り立てる巨大リスは、相手が不意に黙り込んだのに気付いてそろそろ拳を下ろした。
 「…あの?」
 様子を伺う瞳を持ち上げた時、ぱぽんと音がしてエレベータが止まる。
 階数を確認し、蓮は開扉ボタンを押して降りるように促した。
 「どうぞ」
 「え、あ、はい。ありがとう、ございます…」
 タレントは首を傾げ傾げ、彼からできるだけ距離を取って箱を出た。


(15)
 しんと冷えたコンクリートの壁に、ふたつの足音がこんこん跳ね返る。
 蛍光灯は点されていても四囲から薄暗さがにじみ出るような地下駐車場を、無言のまま二人は進む。
 2ブロック過ぎてから角を曲がると、蓮は対面手前から3つ目のスペースを指した。
 「あれが俺の車。ナンバーも覚えておいて」
 「あ、はい」
 ちらちらと前を歩く蓮の背中を窺っていた京子が急いで視線を移す。
 と、そこには、弱い灯りをつるりと弾く白い車。
 高そう、と彼女は喉の奥で呟いた。


(16)
 「乗って」
 「はあ」
 後ろ姿も覚えておくとか何とか言って車の後ろに回りこんでみたら、なんとポルシェのロゴが入っていた。
 ちょっと飛び上がった京子はドアを開けられても硬い動作で怖々近付く。毛ほどの傷もつけられないとばかり、慎重に慎重に乗り込んだ。
 対して無造作に運転席に乗り込んで来た蓮に、駆け出しも駆け出し、湯気が立つような新米タレントはなにか複雑そうに問いを放つ。
 「あのう、失礼ですけど…
 「マネージャーさんって、よっぽどお給料がいいんでしょうか?」
 「は?」
 「だって、こんな車…それによく見たら、服も何だか高価そうですし、またそれが身に着いていると言いますか」
 へもへも眉を下げているのは、スケジュール真っ白の新人タレントの給料を思ってのことだろうか。
 蓮は苦笑を浮かべ、手の止まっている京子のシートベルトを装着してやる。
 「そういうわけじゃないんだけどね…」


(17)
 「そういうわけじゃないって…あ、いえ、すいません立ち入ったこと」
 京子は言いかけて引っ込めるので、蓮も濁そうとした言葉が引っ込んでしまった。尋ねられれば適当にごまかしただけだったろうに、聞かないと言われると言ってもいいような気になるのはおかしなものだと思う。
 「いや、構わないよそれくらい。まあ、株とかもちょっといじってるってだけで。証券会社に勤めてる友人がいてね。なかなか優秀だから、任せっきりに」
 「株ですか」
 軽く説明しながらイグニションキーに手をかけると、途中で胡散臭そうな声が飛んで来た。思わず、おやと見返る。
 「言ってはなんですが、そういう、実体のないマネーゲームには賛同しかねます。一部投資家の利益のために、額に汗して働く生産者を踏みにじっていいはずはありません」
 「…ああ…まあ、そんな場合もあるかもしれないけど…
 「しかし君、若いに似合わない考え方をするね」
 マネージャーは車のエンジンをかけながら苦笑した。
 「いまどきの子だったら、むしろそういう、汗をかかずに稼ぐっていうのに憧れそうだけど」
 「どうせ私はおかんです」
 京子がぶつと言った。
 「は?」
 「だから、付き合いきれないって2ヶ月でマネージャーさん3人替わって」


(18)
 「ああ…」
 蓮の声に乗ってしまった納得の響きを、京子は敏感に聞き分けた。
 「敦賀さんも、私のこと扱いづらいって思いますか」
 「え、いやそんなこと。個人の主張をないがしろにするようなまねはしないよ」
 するりと車を出し、マネージャーは軽く肩を揺する。しかもおそらく、京子は頑固なのだろう。しかしだからと言って、2ヶ月で3回のマネージャー交代か?
 彼は車を運転しつつ思案しつつ、隣の様子を窺った。
 「ただ、君の感性を理解するマネージャーに出会えてなかったんだ、と思って」
 「じゃ、敦賀さんは理解してくださるんですか」
 重ねられた問いに、一瞬目を伏せてから頷く。
 「そうだね…理解っていうのは割と感覚的なものだから必ずできるなんて約束はできないけど、少なくともそのための努力を惜しもうとは思わないな」
 タレントは納得したのかしないのか、それきり黙り込む。ややあってから、またひとつ質問を放った。
 「これからのためにって、今どこへ向かってるんですか?」



 
 
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