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たいせつでたいせつで(11)

 「きゃあああvvv」
 たまご色のハートマークを撒き散らし、麗しのミセス・ヒズリは身をよじった。
 キョーコはレトロ風ローウエストの桜色のワンピースを着せられ、それよりもう少し濃い色のエナメル靴を履かされている。レッグソックスはもちろん白のレース、頭上には白雪姫のようなリボン。
 「かわいいわ、かわいい!!」
 少女に抱きついて頬ずりする。しまくる。
 「ほっぺもぷくぷく~vv
 「ねえあなた、キョーコったらすごく可愛いと思わない!?」
 ぱっと上気した頬を振り向かせる妻に微笑を返し、ミスタ・ヒズリは満足げに同意した。
 「まったくだ。君もだがね、ジュリ。君たちと来たら、美しき善の魔女グリンダとドロシーのようじゃないか」
 「あらお上手ね」
 飛ばすハートの色を変える両親を呆れ顔で見やり、クオンはこっそり溜め息をついた。
 (こうなるんじゃないかと思った)
 最初のプレゼントに服を、と言い出した母に率いられて入った少女服のブティック。とっかえひっかえあれもこれもそれもどれもとキョーコは着せ替え人形にされ始め、かれこれ2時間近くが経過する。
 またそれで、綺麗な服を着せられたキョーコが時々おずおずと微笑むものだから、母のボルテージはうなぎ上る一方なのだ。
 放射される熱気にあてられているのだろう、両親に気付いた人々も遠巻きのまま近寄って来ないのはいいとして、正直言って14歳の少年には阿呆のように着せ替えショーを見守るこの現況はいささか辛い。
 (俺が全部選ぶならともかく)
 そんな、母親にまで妬くなよと天の声も降りそうなことを考えつつ、彼は両親にしばしの別行動を申し出た。
 「まだしばらくここにいるだろう?俺、俺のプレゼント買いに行って来るよ」
 「そうか」
 もう目星はつけてある。クオンはジャケットを羽織り、急ぎ足でブティックを出た。



 「どう、クオン?」
 得意げな母の鼻息を受け、少年は少女からぺりぺりと視線を引き剥がした。
 「すごく、かわいい…」
 溜め息のように呟く。さすがに母の見立てだと思った。キョーコの可憐さを過不足なく表現し、それでいてエキゾチックな深みを湛え、しかも傷跡をひとつも見せていない。
 裾と袖口にベルベットの切り返しが入った深緑色のドレスによく映える黒髪を撫で、クオンは繊細なレースの手袋に包まれた手を取った。
 「よく似合うよ、キョーコちゃん」
 笑いかけると、少女の頬にほんの少し赤みが差した気がした。
 「よし、じゃあ食事に行こう」
 クーが言い、ドレス姿の少女を片腕に抱き上げる。手をもぎ離されたクオンが抗議の視線を向けると、父は上機嫌のままキョーコの頬に口付けた。
 「いいじゃないか、娘を持った気分を味あわせろ」
 「悪かったね、息子で…」
 「何言ってる、お前は私の一番の宝物だぞ?だが、宝物が増えるのも楽しいものだからな!」
 颯爽と歩き出すクーの先導で、一家は駐車場へと向かう。父の食事量では急にその辺の店へ入るわけにも行かないため、車で行きつけのレストランへ向かうのだ。



 「キョーコちゃん、誕生日おめでとう。俺からのプレゼントだよ」
 席に落ち着いたところで、クオンは持っていた包みを差し出した。キョーコの手を取って包装を解き、中身を出して見せる。
 シンデレラの絵本。彼女が昔から憧れていた。
 豪華なパーティーのシーンを開いて見せると、キョーコはページを指先で辿ってふんわり笑った。その愛らしさにヒズリ一家の全員の唇が綻ぶ。
 「本当、娘もいいわねえ…」
 ジュリエナがうっとり呟いた。
 「ねえあなた」
 夫に向き直った時には声調子が変わっている。
 「いっそ、キョーコを私たちが引き取るのはどうかしら。だってクオンの大事な子なんだから、もう娘も同然じゃなくって?」
 先走りの発言内容ながら真剣な表情の妻に、クーは食前酒のグラスをテーブルに戻して腕組みをした。
 「ふむ」
 一瞬だけ瞑目し、
 「悪くないな」
 と笑う。
 「でしょう!?そうしたらクオンだって、ずっとキョーコといられるもの」
 ジュリエナの言葉に、固まっていたクオンが覚醒した。
 「そ…うだけど、でも…」
 「なんだクオン、お前も喜ぶかと思ったのに」
 「…」
 少年はひとつふたつ吐息をつき、考え考え言葉を紡いだ。
 「それは…キョーコちゃんと一緒に暮らせるのは嬉しいよ。俺はね。でも、駄目だと思う…」
 「なぜ?」
 母に問われ、彼は言いにくそうにぼそぼそと言った。
 「キョーコちゃんには、確かに家庭が必要なんだ。愛してくれる両親が」
 「私たちでは、駄目か…」
 息子の懊悩に為すすべもなく竦んだ親だから、と含まれた意味を読み取り、クオンは申し訳なく思いながらかぶりを振った。しかしこれはと一気に言い切る。
 「違うんだ、そういう意味じゃなくて。キョーコちゃんには、愛してくれるだけじゃなくて、ちゃんと毎日一緒にいてくれる両親が要ると思うんだよ。それにはうちじゃ駄目だ。父さんと母さんは忙しすぎるし、俺じゃ親にはなれない…」
 「クオン…」
 「俺だって、キョーコちゃんと暮らせたらいいと思うけど」
 奥歯を噛む息子の姿に、クーもジュリエナも黙り込んだ。おそらく、キョーコを引き取るという話を一番に考えたのはクオンなのだろう。けれど、本当にキョーコのためになることは、と彼はその案を飲み込んだ。
 「だから」
 少年は言いにくそうに、けれどまっすぐ父の瞳を見る。
 「そういう家を、探せないかな。父さんたちは顔が広いだろう?どこか、キョーコちゃんが当たり前に子供でいられる家を…」
 息子の強い視線を受けて、クーは唇をほんのわずか緩め…
 頷いた。
 「わかった。キョーコに里親を探してみよう、お前の言う条件で。だがクオン」
 「え…」
 ほっとした顔をするクオンに、彼は鋭い目を向ける。
 「もしそれで…キョーコが遠いところへ行くことになっても、いいのか?」
 少年の肩が、びくりと跳ねた。



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