スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

たいせつでたいせつで(95)

 「えっと…なんか、ごめんね」
 謝るキョーコに、靴を履き終えたクオンが振り返って笑顔を見せる。
 「どうして?キョーコちゃんが謝ることないよ」
 「だって、クオンはマカナン監督のこと苦手みたいだし…一緒に日本へ行くことになって、辛いかもって」
 「ああ…そうじゃなくて」
 少年は少し身を屈め、少女のやわらかな頬に触れた。
 「え?クオン」
 狼狽するキョーコを少し引き寄せ、額同士をこつりと当てる。
 「俺はね、キョーコちゃんと二人で行きたかったんだ。だからタイショーがしぶい顔してた、っていうのもわかってるけど」
 そのまま瞳を覗き込むので、覗き込まれた方は真っ赤になって暴れ出す。
 「ちょ、クオン、近い、近すぎるってば」
 「うーん…まだダメなんだ」
 不満そうな声を上げ、クオンはやっと手を離した。
 二人の間にうす黄色い沈黙が落ち、緩くだが複雑な渦を描く。そんな隙間に開店した店舗の方から洩れて来る賑やかな笑い声が入り込み、更にかき混ぜた。
 「…監督はご機嫌だね」
 「う、うん」
 「開店前から来て自宅に上がりこむほどタイショーと親しくなってたなんて思わなかったよ、まったく」
 「うん…なんか、古い日本映画の話で妙に馬が合ったみたいで、毎日いらっしゃるの」
 「そうなんだ…あの人、ほんとにいつ仕事してるのかな。前に父さんが、宵っ張りだとは言ってたけど」
 クオンは頭痛を堪えるような顔をした。それへキョーコが、つかみかかるように背伸びする。
 「あの、えっとね、でもね」
 「え、え、うん?」
 「クオンを頼りにしてるのは、ほんとだから」
 「…キョーコちゃん…」
 顔を真っ赤にして一生懸命に言うから、胸に溢れる愛しさを抑えかねて少年は少女に両手を伸ばす。引き寄せて抱きしめ、目を伏せた。
 「うん…頼って、いくらでも。俺にできることは、全部してあげる」
 「い、いくらでもなんて、そんなのはダメ。私だって、私にできることはしなくちゃいけないもの」
 もがくキョーコの髪につれないねと溜め息を落とし、のろのろ腕を緩める。
 「焦っちゃ駄目、と…」
 ごくこっそり呟けば聞き取れずにキョーコが首を傾げた。
 「なあに?」
 「いや…うん、頑張るから」
 「う、ん…?頑張って…?」
 少女はぱちくり目を瞬く。金の髪の少年は苦笑半分頷き、じゃあ帰るねと一歩下がった。
 そこで返しかけた視線を戻す。
 「あ、そう言えば。明後日、CFの出演契約に行くわけだけど。その後、時間あるかな」
 「え、うん。大丈夫よ」
 「よかった。じゃ、来月のパーティの打ち合わせしようね。何着て行くかとか、差し入れは何にするとか」
 一瞬ほのかに頬を染め、それからキョーコは嬉しそうに笑った。
 「うん!」



 「ちょっと大き目のホームパーティみたいなものだから、普段着に毛が生えたくらいの服装でいいんだ」
 CF契約の帰り、立ち寄ったバーガーショップでクオンは早速切り出したが、相手に彼の話を聞いている様子はなかった。
 「キョーコちゃん?」
 名前を呼ぶと、いま交わして来たばかりの契約書を穴の開くほど見つめていた少女が、ようやっと顔を上げる。それが青いような赤いような不思議な顔色で、少年は思わず腰を浮かせた。
 「ど、どうしたの。何か不備があった?」
 問うクオンに、彼女は勢いよくかぶりを振る。
 「う、ううん!ロッティさんがちゃんと確認して下さったし、第一私よくわかんないし、不備なんて…そうじゃなくて」
 音量を抑えようとしているせいか声が少しかすれている。クオンはますます不審げに首を傾げた。
 「じゃ、一体」
 「だ、だって!これ!!」
 キョーコは連れの目の前に契約書を突きつけた。細い指先が指すのは、契約金と出演料の欄。
 「こっこんな…」
 金額、と口走る前に、クオンがさっとキョーコの口を押さえた。しい、と自分の口の前で人差し指を立てる。
 「そんなこと、こんな所で大声で言わない方がいいよ。それも、もうカバンにしまって」
 もごもご、と動作で頷き、少女は言われた通りにカバンを開いて書類を納める。
 「ごめんなさい…私、びっくりして」
 手を離すとへどもど謝るので、少年はやわらかく苦笑した。
 「うん、まあ…無名の新人には破格かも」
 「よね!?どうしてこんな」
 「いやだって全米放映だし、あと、キョーコちゃんが引っ張り出した二人のスカウト料?感謝料?そんなのも入ってるんじゃないかな」
 あとマカナン監督の迷惑料、と付け加えたいところは我慢して、クオンは目玉をきょろりと回した。
 「父さんなんかキョーコちゃんといる時はただの変態オジサンだから実感しにくいと思うけど」
 「へ、変態って」
 「ホントだろ。君に触りすぎるし。
 「まあとにかく、あれでも大スターなわけで、まともにCMに出たら契約金だの出演料だのの金額は俺たちなんかとは比較にならない。それが無料になるんだから、クライアントにしてみればキョーコちゃん様々ってわけ」
 声を低めて話すクオンにつられてテーブルに屈み込んでいたキョーコは、あれでもとか様々とかの部分で眉を下げる。
 「でも、クオンだって一緒だからクーパパたちは」
 「俺だってキョーコちゃんのおまけだよ」
 クオンが笑うと、少女はきゅうとブスくれ顔になった。
 「…違うもの」
 「え」
 「私、クオンがいるから引き受けたんだもの。いっつもクオンに頼ってばっかりの、おまけは私だもの」
 ぶつぶつ言われて少年がへたばる。
 「ほんと、勘弁してキョーコちゃん…ほとんどイジメだよ……」
 「ええ!?」
 驚く少女からは見えない位置、テーブルの下で、彼の両手はわきわきと蠢いていた。

  
 
 
  web拍手 by FC2
 
 


 うう…ここでラブラブフラグ立てるのは早すぎてあとあと困るとわかってるんだが…っ。ガマンでけん堪え性のないわし。まあ原因がどこにあるかは明白だナ…
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
作品一覧
サイト「花うてHP!」トップよりブログ内の作品のリストに飛べます。閲覧者の皆様のアクションに対して加算させて戴く「花うてポイント」の説明・管理もこちらよりどうぞ!

作品リスト(サイトトップ)

アクセス

・メールフォーム

・BBS

リンク

◆リンクページ


◆当ブログへのリンクについて

当ブログはスキビコンテンツをお持ちのサイト様に限りリンクフリーといたします。


ブログ名:花のうてな

管理人名:みなみ なみ

URL:http://hananoutena.blog14.

fc2.com/


 ↓各ジャンルごたまぜの本サイト。

↓スキビの同人誌作品をブログ記事として収載・販売しています。(2014年7月までで更新停止)

 ↓BUD BOY二次です。


  • 管理画面
  • RSSリンクの表示
    QRコード
    QR
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。