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パクス・ツルガーナ(31)~(36)

 拍手お礼にて連載しているパラレル話です。
 敏腕なのに担当タレントにモテ過ぎたり自信を失わせたりするのが問題というマネージャー敦賀蓮の手腕によって、ちょっと変わった性格で扱いづらいとされるタレント京子がのし上がっていく(?)物語。最後は…?


パクス・ツルガーナ

(31)
 「ちなみにそのアルバイト先と言うのが母の知人の経営する某高級旅館でして、そこで仲居をしていたために言葉遣いや姿勢を叩き込まれているのです」
 「ああ…」
 そう言えば、日本的な内股動作だったかと蓮が納得の声を上げる。
 一方の京子はたぎる怒りを押し込めるように声を低め、少し話を先へ飛ばした。
 「そうこうするうちに母が亡くなって…生命保険の受取人は私になっていたものを刺すの何のと脅すすかす、果ては通帳を持ち出して父は女性と逃亡しました。当然のように私は置き去りです」
 う、と喉に引っ掛かる言葉を、蓮はもごもごと口の中で転がす。まさかこんなヘビーな話が飛び出すとは思っていなかった。
 「それは、何と言うか」
 しかし京子は反応に困る彼の様子を気にした風もなく拳を握り、やたらとハキハキ叫ぶ。
 「いかがですか?この絵に描いたような不幸の連鎖。もう、演歌歌手になる他はないと思いませんか!!?」
 「はあ!!?」
 ぎゅりゃ。今度こそタイヤが悲鳴を上げた。蓮は大慌てで車のコントロールを取り戻し、そのまま路肩につけるとハンドルに突っ伏した。


(32)
 ぎしぎしと担当タレントに顔を向けたマネージャーは、スカスカ空気の抜けるような声で質問を綴る。
 「歌手って、演歌で…それが、志望理由…?」
 「左様ですっ。だってもうこれは、女ののど自慢に出るしかないような経歴じゃないですか」
 「いや…えーと…」
 かなり語弊があるような。
 こめかみに指を当てるのへ、タレントは少しせいせいしたような顔を向けた。
 「そういうわけで、演歌歌手になりたいと事務所のオーディションを受けたのですが」
 「落ちた…?いや、でも、現にここにいるな…」
 蓮が緩慢に顔を上げる。今度は何が出てくるのだろうと恐れるような動作だった。
 「はい。演歌歌手としては歌唱力と押し出しが足りないということで、そちらには拾って戴けませんでした。ですが、何でも審査の際に披露した私の特技や履歴書に記入した内容が気になると、入所自体は認めて下さったのです」
 もしや、とLME社員は脳裏にそんな事を言い出しそうな人物の服…いや顔を思い浮かべる。
 すると少女があっさり言った。
 「社長さんが」
 やっぱり。


(33)
 「あー…なるほど」
 蓮は自分が馬鹿になったような気分で額を撫でた。その間にどうにかこうにか気を取り直す。
 「ところで…履歴書は後でちゃんと見せてもらうけど、オーディションで披露した特技って何だったのかな」
 それは“売り”になるほどのものだったのだろうか。とマネージャーの思考に切り替える彼に、返されたのはまたもや予想を超えた返答だった。もう稀少と言っていい。
 「大根を桂剥きにして、バラを…作ろうとして張り切りすぎ、葉牡丹になってしまいました!」
 だいこんのかつらむき。で葉牡丹。
 それはもしかすると、すごいのではないだろうか。彼女はおかんを超えている。しかし、タレントの特技としては…それはどうなんだろう?活かす場面に遭遇できるだろうか。
 「いや、まあ、とにかく…大体の事情はわかった。それでタレント部に回された、と。じゃあ君は、今でも機会があるなら演歌の方に進みたいと思ってるのかな?それならそれで、今後の活動方針も変わって来るけど」
 蓮は心の中で平穏を祈って十字を切り、冷静であろうと努める。マネージャーたる身、それも9歳も年少の少女の前で見苦しく取り乱すべきではない。
 可能な限り穏やかに尋ねると、京子は自分に問うように考え込んだ。


(34)
 「そうですね…歌は好きですが、演歌を歌うには私には足りないものが多すぎるようです。…と、社長さんと話すうちに理解しました。苦労すれば誰でも演歌歌手になれるわけではないのに、浅はかだったと今は思います」
 「じゃあ当面、そっちは視野に入れなくていいね?」
 マネージャーは少々安堵しながら尋ねる。まったく、ただでさえ扱いにくそうなこの娘を、別方面の進路まで考慮して育てるとなればどれだけ苦労することになるのか測り知れない。
 「はい…心の持ちようが問題なのだと言われれば、私は有効な反論を持っておりませんし。ラブミー部に入れられるのも、あるいは仕方のないことなのかもしれません」
 「そう…」
 もうじき最初の目的地に着く、と考えていた蓮は、一瞬担当タレントの言葉を聞き流した。
 右折レーンへ車線変更を済ませてから、やっと脳に届いた情報に引っ掛かる。
 「えっ!?」


(35)
 「ハイ?」
 今度はハンドルを取られることこそなかったが目を剥く蓮の様子に、京子がきょとんと振り返った。
 「いや…ラブミー部って…君、そうなのか?」
 社長からの通達は目にした。愛こそすべてが信条のラブ・モンスター、LME社長ローリィ宝田は確かに、そんな部門の設立を下達して来ていた。
 いわく、『光るものを身に具えながらも愛する心の足りない者たちを覚醒させ導こうという壮大なプロジェクト』だそうで、仕事を通じて人の役に立ち愛し愛される喜びを知ることを目的にするのだとか…
 「椹さんはそんなこと一言も」
 言いかけて彼は、訝しげに眉根を寄せる。
 「それに、ラブミー部員には当面マネージャーをつけないとか聞いたのに」
 呟くうちに、心に浮上する疑惑。
 「まさか」


(36)
 前方の信号が赤に変わった。蓮は緩くブレーキを踏み、同時にポケットに手を突っ込む。
 ガサガサと取り出したのは、一枚の書箋だった。
 「敦賀さん?」
 横でキョーコが目を丸くしているが構う余裕もなく、彼はものすごく適当に4つ折りにされたそれをガサガサもどかしく開く。
 一行目には、『辞令』の二文字。次に、彼の名前。それから、
 所属。
 「“ラブミー部”…!?」
 ばり、と大きな手の中で書類が断末魔の悲鳴を上げた。
 何だこれは、何だこれは、何だこれは。
 蓮はぐるぐると疑問の渦巻く頭を両手で抱えてシートの背もたれに背中を叩きつける。しょっちょこばった大きな体の勢いに押され、さしもスポーツカーのシートも小さく揺れた。
 絶望を音にしたような声が、車内の空気を黒く染める。
 「俺まで、ラブミー部って………」
 「え」
 


 
 
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