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たいせつでたいせつで(100)

 「キョーコちゃん…」
 前を歩く小さな背中に、クオンは恐る恐る呼びかける。
 少女は赤い顔を半分だけ振り向かせ、
 「知らない。クオンのばか」
 ぶつりと呟いた。
 「嫌い」
 「…!」
 棒立ちになった少年が足を止めるのにも構わず、キョーコはスタスタ歩き続ける。少時それを見送った後、ぶると頭を振ったクオンは慌てて追いかけ、細い腕をつかんで引いた。
 「やっ…」
 抵抗するのを封じて抱き上げる。
 「ク、クオン!?」
 「嫌いでいいよ。いいから、いまはおとなしくしてて」
 「ど、どうしてこんな」
 「足、痛そうだ。靴擦れした?」
 尋ねられてキョーコは、情けない瞳を返した。
 「大、丈夫だもの…っ」
 「俺が大丈夫じゃないよ、君に痛い思いさせておくなんて」
 少年は困った顔で少女の背中をぽんぽん叩き、そのままの格好で歩き出した。
 「なっ…」
 ぱっと真っ赤になったキョーコが、それでもいじいじ抵抗して見せる。
 「さっきは、クオンが苦しい思いさせたじゃない…」
 「そうだね、ごめん」
 「……」
 少女はじっとり黙り込んだと思うと、ふいと視線をあさってへ逸らした。
 「なんで、クオンがあやまるの」
 言いかがリのような台詞に、碧い瞳が丸くなる。
 「キョーコちゃん?」
 「わかってるもの。クオンはわたしのためにムリヤリ吐かせたんだもの。私が間違ってお酒なんか飲んじゃったから…」
 「キョーコちゃん」
 背の高い少年が安堵を浮かべて微笑んだ。
 「君のせいじゃないよ。あれは、俺が迂闊だった」
 「ううん!私、気がついてもよかったの。ふだんなら気がついたはずなの。でも私、舞い上がってて匂いに気がつかなかった…」
 「君は女の子たちの話に気を取られてたから」
 「ちがう」
 キョーコは勢いよくかぶりを振る。
 「私、は…クオンがいつもと違うから。ちょっと大人っぽさが上がってて、びっくりして…み、見とれちゃったって言うか」
 「…そう、か。じゃ、やっぱり俺のせいなんだ」
 などと言いながら、少年の端整な顔には蕩けそうな笑みが拡がっていく。日本の少女は自分の発言にやっと気付いてぽかすか暴れだした。
 「ち~が~う~の~!!」
 「危ないよ、キョーコちゃん」
 クオンが笑顔のまま唯一の少女を抱きしめ直す。その時、
 「ちょっと貴方」
 呼び止める声を聞き、彼はキョーコごと斜め背後を振り返った。
 「ふけいさん…?」
 少女が呟く。
 市警の制服を来た若い女がバッジをかざし、クオンに名と住所と年を尋ねる。
 「クオン・ヒズリ…年よりも上に見えるのね。
 「で、貴方達、どういう関係?兄妹って感じでもないけど」
 「は、い?」
 「言い争ってたでしょう?その子、どこかから攫って来たとかじゃないでしょうね」
 「え…ええ!!?」
 なんとクオンは少女誘拐の容疑をかけられているらしい。腕に抱えたままのキョーコと婦警とを、彼は困惑もあらわに見比べた。
 「いえあの、誤解です。俺はそんな」
 言いかけると、突然視界が暗くなる。
 「!?」
 ぎゅう、と自分の頭にしがみつく細い腕の震えを感じ取り、彼は言葉を失ったまま目を伏せる。
 「ちが、いますっ。クオンはおともだちでっ」
 あわあわと、キョーコの方が弁明を始めた。
 「私が、私がわるいんです。間違っておさ」
 「キョーコちゃん」
 警官に飲酒を主張しようとするのを慌てて遮り、クオンは軽い体をそっと揺すり上げる。
 「落ち着いて…大丈夫だから」
 優しく囁けば、顔を上げたキョーコばかりか婦警までが頬を染めた。少年は鼻先にかかるしなやかな黒髪を撫で、警官に向き直る。
 「ご質問への答えは、彼女のもので大丈夫かと思いますが。補足させて戴けば、彼女が靴擦れを起こしたのでこういう格好になりまして。恥ずかしがって暴れるのを宥めてたところを誤解させてしまったかと思います」
 はきはき言い切ると、少女がまた腕に力をこめて彼の首にしがみつく。
 「そ、そうですっ。私がわるいの」
 「キョーコちゃんは悪くないったら」
 「でも」
 言い合う様子に、とうとう婦警が両手を挙げた。
 「ああもう、わかったわ。誤解して悪かった。やってられないわね、もう…」
 「はあ」
 「?」
 ぱたぱた手で顔を扇ぐ様子に、クオンはわずか染まる頬を緩め、キョーコは不思議そうに目を瞬いた。
 「時間取らせてごめんなさいね。もう行って」
 少年に向けた婦警の目には、生温い苦笑が浮いている。頑張りなさいね?とでも言いたげな視線に彼も苦笑を返し、クオンはそれじゃと踵を返した。腕の中で、少女がへこりと頭を下げる。
 それから、彼女はへなへなと彼の肩にもたれかかった。
 「びっくり、したあ…」
 「うん、俺も」
 偽らざる真情をこぼし合えば、キョーコはそうかなあと呟く。
 「クオンは、すっごく落ち着いてたじゃない」
 「そうでもないよ。特にいま、すごく舞い上がってる」
 肩をあたためるふくよかな温もりに目を細め、輝く金の髪の少年は金色の声を舌先に乗せた。
 「俺を守ってくれてありがとう、キョーコちゃん」
 少女ががばとばかり身を起こす。
 「う、あ、えっと、あの」
 「うん?」
 「あの…」
 また顔を伏せてしまったキョーコを、クオンは優しく揺すった。
 「どうしたの?」
 「…さい」
 「え?」
 「嫌いなんて言って、ごめんなさい」
 蚊の鳴くような声に、少年が微笑む。
 「いいんだよ、そんな…」
 言いさした彼の言葉尻を遮り、キョーコはぷると震えた。
 「ほっ!ほんとはね、ほんとは……
 「…だいすき…」
 そしてクオンの進む道筋には、魂が抜けたように赤い顔で立ち尽くす女性が点々と残されることになった。





 
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 とうとう3ケタになってしまいました。ここ、CF撮影持って来たかったんですが無理だったので、せめて少し甘めにしてみたり。



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