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パクス・ツルガーナ(55)~(60)

 拍手お礼にて連載しているパラレル話です。
 敏腕なのに担当タレントにモテ過ぎたり自信を失わせたりするのが問題というマネージャー敦賀蓮の手腕によって、ちょっと変わった性格で扱いづらいとされるタレント京子がのし上がっていく(?)物語。最後は…?


パクス・ツルガーナ

(55)
 「…!」
 言い切られてタレントは大きな目をいっぱいに見開く。
 「豊かさの、証明…?」
 解放された頬をさすれば、
 「そう」
 しっかりと頷いたのは彼女のマネージャーだった。
 「いま、ミス・ウッズは君の中に眠っている可能性の一部を見せてくれた。それだけでもずいぶんいろんな色があったと、自分でも思わないかい?」
 穏やかに、真摯に語る声に、京子は戸惑いを浮かべながらもじっと聞き入る。問われて自分の胸に手を当てると、おずおず頷いた。
 「あの…すごく、びっくりしました。メイクの魔法ってすごいって」
 「きょ・う・こ・ちゃん」
 またしても横からウッズが牽制して来る。さっき自分が言ったことをもう忘れたのか、と言いたげな瞳の光に、礼儀正しいおかん少女は続きの言葉を失った。
 蓮が美容師に視線を流して頷く。
 「色というのは、ものが自分が持っている色の光を弾くからその色に見える。つまりあれは全部、君の中にもともとあると言うことだ」


(56)
 「私の中に、もともとある、ですか…」
 信じかねると言いたげに、京子はのろのろと呟いた。その目の前に進み出た小柄な美容師が、挑戦するように瞳を覗き上げる。
 「そうよ。白は無色じゃなくて、全色」
 腰に手を当て、かるく首を傾け、彼女はにっと笑った。
 「だから、究極って蓮ちゃんは言ってるの。自分のマネージャーを信じなさい」
 励ますとも突きつけるともつかない言葉を、タレントは戸惑いがちに受け止め、そして持て余すように視線を泳がせる。こっそりと息をついた唇が、いちど開いてまた閉じた。
 「京子」
 呼びかける男の声には要求が含まれている。京子は床に落とした視線を少しだけ持ち上げ、腹の上で組んだ自分の両手を見つめた。それは、かすかに震えている。
 「…信じ…」

(57)
 「たい、です…いえ、信じています。でも…私は」
 ほろりほろり、と言葉は小さな唇からまろび出ては宙に溶ける。淡雪に似た脆さ儚さをそこに感じ、美容師もマネージャーもしんと黙り込んだ。
 「……」
 京子はなかなかあとを続けようとしない。
 「君、は?」
 蓮が焦れたか促すのへ、彼女は視線も上げずにゆるくかぶりを振った。
 「自信が、ないんです」

(58)
 「そういうことなんだと、思います」
 締めくくるように呟かれた言葉を受け、長身のマネージャーは吟味するように繰り返す。
 「自信…」
 これは生育環境のせいなのだろうか、と彼は頭の奥で考えた。早くに失った母、添わぬ父。生活や家事の中で心の落ち着く場所も自分にかける手間も不足していたらしき彼女には、自己を信じる気持ちが育ちにくかったのかと。
 ならば今、彼女にそれを与えるのは自分の役目であるに違いない。固まりかけた意思が、ふと警鐘を鳴らした。
 少し違うかもしれない。
 彼にできるのはきっかけを与えることであって、彼女は彼女の心を自分で決めねばならないのだ。でなくては、なぜそれを自信などと呼べるだろうか。
 蓮は心に頷き、なまじな俳優よりも整った造作を引き締めた。
 「だけど」

(59)
 「君は、この世界に入ることを自分で選んだんだろう?」
 「は、はい、それは…」
 決め付ける彼に、京子は逆らう様子を見せなかった。ただし口の中でもちょもちょ言う。
 「年齢学歴経験不問となると、あまり選択の幅がなく…」
 マネージャーはこの際はさして重要でないとタレントの述懐を聞き流し、自分の話を続けることにした。
 「それにその口で、一旦身を寄せた世界で努力邁進する決意にいささかの揺るぎもないとも言った」
 「申しました」
 間髪入れず返る返答に、満足げに頷く。
 「潔くて結構。あとは、実行してもらうだけだね」
 「…!?」
 蓮の顔をすると掠めた笑みを見たのか、タレントの顔色が白くなった。
 「あの」
 「この世界、自信や自意識というのもなかなか重要でね」
 「で…ですがっ」
 意外なところで上がった反駁に、彼はおやと眉を顰めた。


(60)
 「…あ」
 京子は言いかけたまま言葉を空に浮かせる。蓮は穏やかに彼女を促した。
 「いいよ、言ってごらん。思ったことは何でも」
 「え…はあ…」
 「今更だろう?車の中じゃ、もっと元気だったじゃないか」
 クスリと笑うとタレントがほんのり赤面する。
 「生意気で申し訳ありません…」
 「そんな風には思わないよ」
 ほんとかな、と疑うように上目遣いにマネージャーを覗き、京子は
 「ええと、あの…そんなものを持っていると、ですね。ともすればバカなことになりがちなのではないだろうかと…」
 またしても妙なところに打球を飛ばした。


 
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