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たいせつでたいせつで(108)

 正面玄関のドアを開いた少年は、今しもアプローチを出て行く赤い車を見る。
 車体に和風の図柄が入ったコンパクトカー。後部座席に、それと同じ色合いの肩が覗いた。
 少年は片手を伸ばす。呼び止めたかった。けれどまだ、名前すら知らない。
 ふわりと風に押し戻される手を、彼は胸に当てる。
 立ち尽くすその姿は、訝しむように見えた。いま覚えている胸の痛みを、その正体を。
 やがて彼は瞳を上げる。
 少女を乗せた車の消えた方向を見つめ、
 ただ見つめ。



 「うへえ」
 マカナンが奇妙な声を上げた。
 「なあに?デニス。クオンはいい演技をしてるように見えるけど」
 やや憤然と、少年俳優の母が問う。するとCFディレクターは曖昧にもごもご呟いた。
 「あー…そりゃ、悪かねえけどよ…」
 らしくもなく歯切れの悪い様子に、ジュリエナは繊細な睫毛の下の青い瞳をじっと固定する。何も言わない。
 「う」
 凝視7秒、マカナンは喉に小骨でも引っ掛かったような声を洩らした。
 「ったってなー…ママにゃ言いにくいオトコの事情ってのも」
 もちょもちょと口の中で言うので、トップモデルが艶やかに微笑む。
 「私は貴方のママじゃないわよ?」
 「…怖い想像させんなよ…うわー俺、初めて坊主に本気で同情した」
 「そう、で?」
 「……」
 マカナンは椅子から立ち上がり、シーン終了を告げる。ほっと肩から力を抜くクオンに着替えを指示し、クーの運転する車が戻って来るのを迎えるように歩き出した。ジュリエナは当然のように、しかも優雅にその隣に並ぶ。
 「たく…」
 頭を掻いたディレクターが肩をすくめた。
 「言うから、あんたもとっとと着替えに行けよ」
 女優が肩をすくめ返した。マカナンは諦め顔で息を吐く。
 「まあつまり、端的にゆーとだな。あんたんのとこの坊主は、あの嬢ちゃんにマジだってこった」
 ジュリエナがわずかに微笑んだ。白鳥に似た首を優雅に傾げ、音楽的な声で現世的な発言をする。
 「そんなの今更言われなくても知ってるわよ?私とクーだって、キョーコが本当に娘になる日をそれは楽しみにしてるんだから」
 「そうじゃなくてなー。だからー…くそ、コドモの生々しい話ってな妙に気恥ずかしいな」
 隣の男がぐらぐら首を揺らす様子に、彼女は足を止めかけた。
 「あら」
 「あら、じゃねえよ全く。ヤツが犯罪に走らねえように、ダンナにでも釘刺して貰っとけよ」
 「まあ…つまり、そういうこと?」
 マカナンの気分が伝染しているのか、ジュリエナまでも表現が曖昧になっている。そう言えばとやはり口の中で呟いて、彼女は奏江に助けられて車を降りるキョーコの姿を見遣った。
 「キョーコも、女の子だものねえ…」
 しかし呟く声に不安や懸念はない。だめだこりゃとばかり、マカナンはこっそり舌を出した。
 
 



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 大人たちにいろいろバレてしまうクオ坊哀れ(笑)。


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