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たいせつでたいせつで(114)

 季節が移った。
 水色の地に淡く牡丹の描き散らされたコンパクトな車に、正装と言うほどではないけれどきちんとした服装の少年が歩み寄る。彼に手を取られているのは、同じ柄のキモノを着た黒髪の少女。
 彼女を車の助手席側に導き、青年へと移り変わる時期の少年は丁寧にドアを開ける。
 少女は礼を言うように微笑みながら彼を見上げ、二人の視線が正面から出会った。一瞬震えた少女が斜めに視線を落とすのを、大きな手が追う。
 上気した頬が、そっと持ち上げられた。
 視線を合わせられて、黒曜石の瞳が揺れて震える。視線を落とせば、少年の喉もかすかに震えていた。
 うすく水を浮かべた瞳に影が落ちる。
 少女は目を伏せ、すこし少年に身を寄せた。
 それに吊り込まれるように金色の頭がゆっくりと落ちる。黒い前髪を唇でそうっと分け、少年はなめらかな額の上に恐る恐る吐息を落とした。
 一瞬の永遠。少女の細い肩がかすかに震える。
 ふたつの唇から、小さな、小さな溜め息がこぼれた。




 「うっへえ…」
 自分で言い出したことだと言うのにマカナンは、辟易の態で舌を出した。撮影が終了してもセットの中でもじもじしている二人を眺め、彼は半笑いで呟く。
 「まあ、甘ずっぺ~こった」
 「いいじゃありませんか!いいですよ、ホント、初恋を思い出します」
 横で拳を握るAD君に、彼はぺっと右の手刀を切った。
 「たりめーだ、俺のイメージ力舐めてんじゃねえよ」
 「舐めてませんよ、いつも敬服してます!」
 「ん?おう、そうか」
 言い切られて彼は殊更に普通を装うが、いそいそ顎を撫でる手つきが上機嫌を暴露している。
 「まあもうちょっと、計画性を持ってくれると言うことないんですけどね」
 追加の言葉でその動作が止まった。肉付きのいい手がしっしと振られる。
 「うるへい。いーから、お前は書類でも書いて来い。クライアントに…」
 「はいはい、フルバージョンの秒数を足してもらうんですね?300秒くらいですか?」
 「…おう。わかってんじゃねえか」
 また上機嫌に戻ると、彼は肩をすくめながら離れて行く助手を見送る。それからまだ立ち尽くしている少年と少女へと目を向け、ひとりごちた。
 「やり直し、かね。坊主はわかるとしても、嬢ちゃんの方は…
 「今夜あたり、だるまやにクーを誘ってみるか。ニポン行きの前に、ちっと話聞いといた方がいいかもしんねえ」




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 次回はおっさんズのターンになりそうです。


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