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each other(中編)

 ベッドの上に投げ出されて、ぼうんと跳ね返る。思わず身を縮めたところに敦賀さんがのしかかって来た。
 「あ…あの」
 初めてじゃない、けど。だけどこんな乱暴に扱われることなんてなかった。どうして。別れることになったから、私がどうでもいいからこんな風にするの!?
 ひどい。
 「敦賀さ…」
 抗議しようと口を開いたところを、大きな手で顎をつかまれる。閉じられなくなった口をじっと見て、敦賀さんは一瞬笑った。暗く、昏く。
 「俺から、離れられなくしてあげる」
 「!?」
 なに言ってるの。なに言ってるの、この人。自分が別れようって…
 かぶりを振ろうとしたけど、押さえつけられたまま強引に唇を重ねられた。必死で肩を押すけどびくともしない。始めは滅茶苦茶に貪られて…だけど、だんだん…いつもの、情熱的だけどやさしいキスに変わっていく。
 「…んっ」
 やだ、どうして。敦賀さんの演技なの?それとも、今までの全部が演技だったなんて…
 …そんなの、残酷すぎる……
 「…ふ」
 目の奥と鼻先が熱くなった。ぐ、と息を呑む私をやっと解放して、敦賀さんはすこし身を起こす。端正なお顔には、苦しげな微笑みが載せられていた。
 「泣かないで…キョーコ」
 そっと言われて、震えてしまった。そんな。そんなこと言ったって。貴方のせいなのに。
 なのに、どうして。
 「だって、君が悪いんだよ」
 どうしてそんな理不尽なこと言うんですか。どうして敦賀さんが、
 泣きそうな顔、してるんですか。
 どう考えていいのかわからずにひたすら硬直する私の胸元に額をつけて、きれいなひとは言った。
 「俺を、愛してくれないから」
 「!!?」




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each other(前編)

 怖い。
 「どうして、君は…!」
 低く呻く敦賀さんの顔は蒼白で、そこに乱れかかる黒髪の影が落ちて、なんだか亡霊じみて見える。
 でもどうして?
 敦賀さんが言ったのに。久しぶりに会った途端。
 この頃会えなくて、ほったらかしててごめんなんて謝って下さるから、お仕事なんだから仕方ないですって答えたら。敦賀さんは俺ばっかり…とか何とか呟いて、いきなり言ったのよ。
 『別れよう』って。
 だから頷いたのに…頑張って、笑顔で。辛かったけど、敦賀さんの負担になりたくないから。
 だって当たり前なんだもの。好きです、つきあって下さいって言われた時からわかってたことだもの。私なんかが、この輝かしい人をいつまでも惹きつけておけるわけない。いつかこんな時が来るって知ってたもの。
 なのに、敦賀さんが怒ってるって、それこそどうして!?
 「キョーコ」
 混乱する私の肩を、大きな手がつかむ。近くで目を合わせられた。痛い。怖い。きれいな黒い瞳のまわりに血の色がかかってて、燃えてるみたいに見える。怖い。
 ものも言えずに息を呑むと、敦賀さんの目が一瞬揺らいだ。
 「どうして…そんなに簡単に…っ」
 搾り出されるみたいな声には、ひどく傷ついたひびき。そんなのってない、私こそが傷つけられたはずなのに。簡単なんかじゃないのに。
 だけど…だけど、そう言えなかった。だって敦賀さん、捨てられた子供みたいに見える。もしかしたら小さい頃の私もこんな顔してたのかも、って思ったら、とても言えなくなった。
 「キョーコ」
 もう一度名前を呼ばれて、恐る恐るはいと答えた。そしたら敦賀さんは、
 不意ににっこり笑った。
 嘘つき毒吐き紳士じゃない。神々スマイルでもない。夜の帝王ですらなくて。陰気な…
 ああ、カイン・ヒールが…
 違う。
 敦賀さんの中に潜んでる(気がする)カイン・ヒールのもとになったひと、が。笑うみたいに。
 すごく、怖い…
 敦賀さんは震えてしまった私を見て、ちょっと困った顔をした。
 「君にはすぐわかるんだね、キョーコちゃん」
 え、と端正なお顔を見上げた瞬間、黒い頭がさっと沈む。と思ったら、背中と膝を掬って抱き上げられた。
 「つ、敦賀さん!?」
 何これ、何これ。どうなってるの。別れ話だったじゃない。なんでここでお姫様抱っこ!?
 状況について行けない私に、恋人なのか恋人だったのか、今でも大好きなひとはもう一度微笑む。
 胸が、痛い。怖いのは、失いたくないからなんだ…でも敦賀さんは終わりにしたがってる。
 「…どうして」
 同じ言葉を返そうとしたけど、そうすること自体が簡単じゃなくて喉が詰まった。先に、低い声が落ちてくる。私にそっと頬ずりして、敦賀さんはうっとり呟いた。
 「だからもう、離せない…」
 「え、え?あの」
 どういうこと。だって、別れるって。敦賀さん、なに言って…
 いっそ泣きたいような気持ちで見上げた黒い瞳は、濡れた艶を湛えて寝室のドアに向けられていた。





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きみだけをみてる(後編)

 「だいぶ高くなりましたね…」
 呟いた俳優の視線を追って、マネージャーはああと頷いた。
 「あれか」
 車の窓に区切られた景色の中心やや左手に、日々高さを増していく電波塔の威容。そこから目を戻すと、彼は呆れ声で言った。
 「そんな顔すんなよ」
 蓮は後悔と不満を閃かせるが、すぐに商売道具でもある笑顔を作る。
 「すいませんね、こんな顔で」
 「今日も男前だよ、ありがたいことに。だから情けない表情すんなって言ってんの」
 「……」
 黙り込むと、横顔に視線を感じた。社がしみじみと言うには、
 「お前、ホンットにキョーコちゃんが好きなんだなあ…」
 「何ですか急に」
 「いや、そりゃ前から知ってたけどさ。ちらっと一部分立ち聞きした言葉だけでそんなに不安になっちゃうくらい、そんなに自信が持てないくらい大事で仕方ないんだなって思って」
 「そういう、温度差のせいでしょうか」
 ぼそりと呟いた言葉に、マネージャーは眼鏡を押し上げて目を瞬いた。
 「はあ?」
 蓮は右のウィンカーを出し、車線変更を開始しながら低い声で続ける。
 「わかってるんですよ。俺があの子を好きなほど、あの子は俺を好きじゃないってことは。でも、もしそれが最上さんを疲れさせてるなら」
 「蓮」
 厳しい声に遮られ、彼は言葉を切った。社は厳かに言う。
 「それ以上言ったら怒るぞ?」
 「…すいません」
 期せずして男二人は同時に溜め息を落とす。社が前に向き直って締めくくった。
 「とにかく、ゴチャゴチャ考え込んでないで本人と話し合え。結構つまんない誤解だって可能性が高いと思うぞ、俺は」
 「はあ…」
 車は局の地下駐車場に滑り込んでいく。暗くなったフロントガラスには、端正な貌がぼんやり物憂げに映り込んでいた。



 「いった~い…」
 エレベータホールに向かう途中、しきりに首の付け根を押さえている女性とすれ違った。確かローカルニュースのリポーターではなかったか。
 彼女は蓮に気付くとぱっと顔を上げて寸時見とれ、同僚らしき男に促されて慌てて歩速を戻す。その間も、自分の首を押さえていた。
 「また上見ちゃった…もー、昨日スカイツリーのリポートで上ばっかり見てたから、首が凝り凝りなのよ~」
 ぼやき声に蓮も社も苦笑を浮かべた。
 「気の毒に」
 「大変ですね」
 言い合った瞬間、二人は何かの電流が走ったように顔を見合わせる。
 『…ん?』



 翌日。
 「じゃ、行って来い。ちゃんと会って来るんだぞ。今日を逃すとしばらく接点がないからな」
 仁王立ちのマネージャーに命じられて、蓮はそわそわと頷いた。ラブミー部々室へ向かう足取りは、期待と懸念とに揺れて一定しない。
 しかしノックに応えてドアを開けてくれた可愛い恋人の顔を見たとたんに、彼の踵には翼が生えた。
 押し込むようにキョーコごと室内に入り、きつく抱きしめる。
 「つ、敦賀さん!?」
 あわあわと見上げて来る大きな瞳が、不思議そうにしたあとぱっと緩む。嬉しくて仕方ないような笑顔に、彼は力の入る腕をどうしようもなかった。
 「あ、あの。どうかしたんですか、事務所の中でこんな」
 キョーコがぱみぱみと肘を叩いて来る。別にギブしなくても…と思いながらゆっくり腕を緩め、彼だけを映す瞳に微笑む。
 「会いたかった」
 キョーコがぼっと顔から火を噴いた。
 「もっもう、何言ってるんですか。そんなの…私もです」
 蓮は微笑み、恋人の首をそっと撫でる。
 「ひゃ!?」
 「俺と話す時は、ずっと上を向いてなきゃいけなくて大変だね?」
 言ってみると、キョーコはちょっと目を瞠ったが否定しない。やっぱりこれかと俳優が思う先、視線を斜めに逸らして口の先で呟いた。
 「でも…見ていたいですから」
 直後に、大きな手が彼女の腰をさらった。蓮は手近な椅子を引いて腰を下ろし、そればかりか膝の上に恋人を座らせる。キョーコの慌てること。
 「つつつつつるがさんっっっ」
 「そんなの、俺もだよ」
 「ふぇ!?」
 「いつでも、君を見ていたい。でも疲れさせるのも嫌だから…二人の時はこうしてるのがいいね」
 少しだけ高い位置にある真っ赤っ赤な頬に唇を寄せ、彼は甘く囁いた。
 「え、えええ!?あの…こうしてって、だって」
 少女タレントの視線が下に落ちる。蓮の脚の上に。その上に乗る自分の腰に。
 「むっ…む~り~で…」
 叫びかけた唇を、蓮は、逸早く塞いでしまうのだった。




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きみだけをみてる〈中編)

 「社さん」
 「わあっ!?」
 突然背後から声をかけられ、社は携帯をお手玉してしまった。結局落とさずにつかまえられたのは摩擦の高いシリコン手袋のお蔭で、ひとかたならぬ働きというべきかもしれない。
 ともあれ、慌てて振り返った眼鏡のマネージャーは、そこに立っている担当俳優を見て笑顔を浮かべた。
 「ああ、蓮。丁度よかった、いま終わったって連絡しようとしてたんだ」
 携帯をポケットに戻して手袋を外しながら、彼は悪戯っぽい視線を流す。
 「でも、お前の方が早く来るとは思わなかったな。キョーコちゃん、まだ時間あるはずだけど早めに次の仕事に行っちゃったのか?」
 にこやかに尋ねるが、蓮は緩く首を振った。
 「会ってません」
 「へ。え…いなかったのか?予定が急に変わったのかな」
 なるほどそれで機嫌が悪そうなのかと社は心の中で納得を呟く。すると俳優が瞳を据えた。
 「社さん」
 190cmオーバーの長身にずいと寄られれば、誰でもつい腰が引ける。
 「な、何だ?」
 それでもちゃんと話を聞こうとする有能にして温和なるマネージャーに幸あれ。しかし天が照覧あったとしても、恵慈は常に与えられるものではない。
 瑕疵なき端貌は影を差したまま、地を這うような問いをこぼした。
 「最上さんと俺の差って、何だと思いますか?」
 「…は?」
 社は切れ長の目を瞬いた。またしても面倒の気配が濃いとばかり、微妙に眉間が寄った。
 「なんでそんなこと聞くんだ?お前はキョーコちゃんとやっと付き合えるようになって幸せ絶頂、悩みなんか山の向こうって状態かと思ってたけどな」
 「いえ、さすがにそこまでは…と言うか浮かれてたのは、それは、認めます。でもちょっとこう、頂上からいきなり突き落とされたと言うか突き落とされそうと言うか」
 「…お前、今度は何したの?」
 妙に突出したり、そうかと思うと八つ当たりのような真似をしたり、過去の行状から俳優はイマイチ信用がない。じっとり見てやると、彼は心外そうに顔を引いた。
 「何もしてません。と思うから、聞いてるんです」
 「じゃ、何言われたんだよ」
 蓮がしばし黙る。
 「蓮?」
 社は腕時計を確かめ、とにかく移動しようと促した。
 「じゃあ話は車の中で聞くから、現場に着くまでに気持ち立て直せ?」
 蓮がそっと溜め息をつく。
 「わかってますよ…」
 おやこれは確かになかなかの凹みようだ、と眼鏡の奥の瞳がくるりと動いた。




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きみだけをみてる(前編)

 「じゃあ蓮、俺は上階で用を済ませて来るから」
 例によって有能かつ担当俳優の月下氷人を自任するマネージャーは、
 例によって某少女タレントのスケジュールまで把握していたが、
 例によってその所属セクションの部室の近くで担当俳優を解放してやった。
 「終わったら携帯に連絡入れるから、それまでひとときの逢瀬を楽しんでくれ」
 例によってぐふふ、と笑うのだが、
 「わかりました、ありがとうございます」
 素直に頷くトップ俳優の笑顔だけが例にはよらなかった。
 そう、苦節ウン年、敦賀蓮はついに最愛唯一の少女を手に入れたのだ。ならばそのベタボレぶりを、とうから心得ているマネージャーになお隠す必要の果たしてあらん乎。
 「ちぇ、からかい甲斐がなくなっちゃったな」
 とこれだけは残念そうに呟いて社が去る。
 蓮は日本人規格を大幅に外れる長脚を優雅かつ迅速に運び、忠良なる恋人として愛しい少女のいるはずのラブミー部々室などという部屋に急ぐのだった。
 そう言えば、彼女はもうここを卒業してもいいのではと心の中で自分を指しながら彼は、じき目的のドアの前に立った。
 社長の所に2人で相談に行こうか、しかしめでたく卒業となれば彼女と会える場所が減るのか、と埒もない思考にノックの手が止まる。そこへ室内から声が洩れ聞こえ、そうしようと思ったわけでもないが自然に耳を澄ましてしまった。
 残念ながらそれは、期待した声とは違っていたが。
 「でもアンタ、敦賀さんとはかなり差があるじゃない」
 晩秋の風に似た凛乎の声はキョーコの親友・琴南奏江に違いない。すると彼女は今ひとりではないのかと多少残念な気がしたところで、蓮はおやと引っ掛かった。
 差とは何の話だ?
 なにやら嫌な予感を覚えるうち、今度こそキョーコの声がした。
 「そうなのよねえ。だから、時々疲れちゃって」
 (…!!?)
 蓮の受けた衝撃たるや。宇宙を照らして爆発する星を背負う俳優の耳に、おそろしい木霊がいんいんと繰り返される。
 疲れちゃって疲れちゃって疲れちゃって疲れ…
 (そんな)
 と思う。まだ付き合い始めていくらも経っていないのに。幸せで、問題がなく、一般的に今が一番いい時と言う状態のはずではないのか。疲れるとか何とか今から言っていては先が続か
 いや冗談じゃないと蓮は拳を握った。
 苦悩・トラウマ・鈍感・卑下・遠慮に勘違い。およそ負のフルコースをどうにか潜り抜けて、やっと思いを通じ合わせた矢先だ。弱気になる暇に、原因を究明し駆逐するに如くはない。
 とは言え…
 過去を思うにつけ、テキは難物ではある。
 ひとまず対策を練ろうと、俳優はよろつく足を叱咤してその場をあとにした。床を這い従う自分の影さえ、色を薄くしているように見えていた。





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